新入会員募集に関して
アルパインクライミングの初心者とは、地図とコンパスを使用でき、テント泊単独行経験はあるがクライミングはしたことがない、というレベルになります。
当会はアルパインクライミングの山岳会となりますので、「ハイキングレベルの一般登山も初心者なので基礎から教えてほしい」という方は対象外となります。ただし、ハイキング経験者でハイキングに徹したいという方やアルパインクライミングの経験者の場合はいつでも入会在籍できますのでお問い合わせください。ハイキングを一から始めたい場合には、適切な山岳会を紹介していますので、ご相談いただければと思います。
初心者の入会については
個別にお問い合わせください
(概ね50歳以下の方とさせていただいています)
お試し参加は現在お受けしていません
労山加盟会以外の他会とのかけもち入会はできません
なお当会で実施している初心者講習は、今後長く当会で
活動していくことを前提にお伝えしている技術となります。
技術の大半は『UIAA総合登山技術ハンドブック』に基づいていますが、
一部日本の環境に合わせて変更を加えて指導しています。
ハンドブックは労山HPから申し込み・購入が可能です。
ガイド資格保持者は制限免除となります。
フリークライミングの経験しかない場合、相応の準備が必要になります。
その際にはアドバイスしていますので、ご相談ください。
*入会希望の皆さんへ
経験者の場合、通年で受け付けていますが、入門以外の計画には、面接時に参加可能かどうか判断します。また、当会ではクライミングに際しては安全に細心の注意を払っていますが、自然条件や参加者自身の不注意を含め100パーセントの安全を意味するものではありません。そのため労山基金、あるいは基金以外の保険に加入されているのかなど、面接の際に確認できるようにご準備ください。保険等未加入、あるいは十分な補償が得られない場合は、単発の保険を準備しますので、山行に参加希望の場合は手続き上1週間以上前に面接をお受けください。準備に数日はかかりますので、直前の申し込みは受けられません。また、ライフスタイル、志向、性格、相互の相性などを総合的に判断し、他会をご紹介する場合もありますので、合わせてご検討ください。経験やレベルとは別に、コミュニケーションに齟齬がある、直前キャンセルする、突然切れる、など、当会の考える一般社会常識や基本方針に合わない場合は入会をお断りすることもあります。当会に入会されない場合は、面接時に書いていただいた書面などは即時破棄しておりますのでご安心ください。個人情報は電子化しておらず、シュレッダー処理しています。
当会のアルパイン初心者新入会員募集の基本方針について
当会では基礎的な技術を身につけたいという新人を募集しています。
ハイキングを始めると登山が面白くなって一生懸命登るようになります。そして数年すると、ハイキングからさらにステップアップした登山スタイル、すなわちアルパインクライミングという分野があり、それに挑戦したい、と考える人が出てきます。
では、どうしたらアルパインクライミングを始められるかというと、ハイキングは一人でいろいろ調べて山に行っていた人も、アルパインとなると独学や単独行ではなかなかハードルが高いということがすぐわかります。
すると、アルパインクライミングに移行するための選択肢は絞られてきます。
まず、アルパインクライミングルートに連れて行ってくれるガイド山行に申し込んだり講習会に参加する。次に考えられるのは、山岳会に入る。あるいは、とりあえずクライミングジムに行ってみてそこで知り合った人やアルパインをしている友人に教えてもらう、という具合にだいたい3パターンくらいになります。
一番お金がかからなそうなのが、山岳会に入る、知り合いに教えてもらう、というパターンですが、これは現在ハードルが高くなっているようです。以前の山岳会では上から下への技術伝達のプロセスが緊密だったので、切れ目なく新人を一人前にすることができていました。しかし、今は、リーダークラスのクライマーの数が激減してしまい、どんなに大人数の山岳会でも、アルパインクライミングを目的に日常的に毎週トレーニングをするためのリーダーになれる人が一人か二人しかいません。三人アルパインリーダーがいればいい方です。そしてそのリーダーたちも新人教育をする
のに疲れきってしまっており、また、自分の計画するレベルの山行にすぐに入れる人とのみパーティーを組むため、基礎のない新人が経験を積むような山行を計画できなくなっています。
大きな会で会員が50人、100人といて毎週のように多くの計画が出ている場合でも、アルパインリーダーは一人か二人しかいないため、新人や初心者でも参加OKが出るような計画は年に1回か2回しかない、という山岳会がほとんどです。目くらましか自己満足の岩トレを三つ峠で行ってはいるものの、では本チャンにいけるか、というと何年もかかってもまったくチャンスがない、というケースもあります。もっとも三つ峠の岩トレで満足している人も多いのですが。
なかには初心者には教えないからガイドについて基本を習ってきてほしい、という山岳会もあります。現在はそのような山岳会が多いようです。
特にインドアジムで知り合ったり、友人を介して紹介してもらったりすると、多少は教えてはもらえますが、実際に本チャンに行けるまで面倒を見てくれるかというと、そこまでは期待できないことがほとんどです。
しかし、アルパインクライミングはすぐに命がかかる活動になるため、当然といえば当然で、ジムで知り合ったくらいの行きずりの人や知り合い程度をアルパイン山行に加えるわけにいかないからです。昔気質の山岳会では、バリエーションルートの計画には原則会員以外との同行不可としているものです。一方、そうした縛りがない「自由な」山岳会というのは、誰と計画を立ててもOKなので、肩がこらない感じで良さそうですが、そうした会はもうすでに山岳会ではなく、力量の揃った会員の集まる「同人」組織と見做した方がいいでしょう。現在では、「山岳会」としながらも実質「同人」組織となっている会が少なくありません。そうした同人タイプの山岳会では基本を教える必要のある新人にトレーニングの機会を作ってくれることはほぼありません。そんなことをしている暇があったら本チャンに行きたい、という人ばかりなのですから。そういう会は一見すると本チャン計画も多いし、すぐにでも参加できて毎週でもアルパインルートに行けそうに思えるかもしれません。しかし、そういう会に入りたいと考えると、ガイドに習ってきて、と言われます。まに受けてお金をかけて基礎を習って入会しても、大抵はクライミングやアルパインにいくグループ、ペアは固定されていて、なかなかその中に入れてもらえない、ということも多いようです。
「基本を習いなさい」と言われて、講習会やガイド山行に通えればまだいいのですが、使いものになるには時間と費用がかかることがわかるかと思います。まず、相当な資金が必要です。岩トレには一日最低8000円くらい、技術のしっかりした頼りになるガイドさんだと15000円はかかります。ガイドもお客さんを選ぶし、お客さんもガイドを選んでいますから、当然です。2日かかるアルパインルートですと、最低でも3万円、経験豊富で人気のあるガイドさんだと最低4万円、難度が上がるとルートによっては5万円、6万円、中には8万円、などのケースもあります。もちろん交通費は別です。またガイドもピンキリで、本当に頼りになる老舗のガイドさんならいいのですが、運悪く金儲け優先の悪質ガイドにであっても初心者にはなかなか見分けがつきません。
アルパインクライミングの場合、こうしたガイドによる岩トレを数回、ガイドに連れられてアルパインルート登攀を2, 3回行ってみただけでは、とてもモノにはなりません。単に「記念に経験しました」という程度です。
語学に例えるとわかりやすいのですが、例えばフランス語やドイツ語や中国語を習うようなものです。一日だけフランス語講習にでたら、日常生活はまったく問題なくフランス語でこなせるようになるでしょうか。天才はいるのかもしれませんが、ふつうの人にはまず無理です。
アルパインも同じことです。
では、技術が身につくまで毎週のようにガイド山行に通うとどうでしょうか。
稼ぎのいい人や資産家なら、そのようにしてガイドについて一人前のアルパインクライマーになることも不可能ではないかもしれません。
しかし、ごく普通の勤め人の若い世代の人たちにこのような選択ができるとはとても思えません。
ガイドさんによっては肝心の技術を教えてくれず、ただフォローで登らせてもらうだけ、というケースもあります。そうなると自立して自分で計画して登る人になることはできません。もちろん、安全に登らせてもらえればお金はいくらかかってもいい、という人もたくさんいますので、ガイドさんのせいでもないのです。
しかし、もしあなたが、登山の醍醐味は「自分で登りたい山、登りたいルートを見つけて計画をたて、それを完遂するためのトレーニングを積んで登ること」だと考えているなら、やはり的確な技術の基礎を固めてせっせと山に登り経験知をあげていくしかありません。
そして、当会はそのように考えている、登山の本質的な喜びを共有できる初心者を募集しています。
ただ、入会していただくには、大切な条件があります。
先に書いたように、現在アルパインリーダーとして新人や初心者の面倒を見ようというリーダーが激減しています。当会にこれから入会する方には、アルパインクライミングの指導をしますので、同じことを次に入ってくる新人や初心者の方にもいずれしてあげていただきたいのです。今は自分が基礎を覚えるだけでも手一杯かもしれません。時間もかかります。でも、時間がかかってもぜひ自分で計画を立てられるようになるまで粘り強く経験を積んでください。
当会の指導クラスも人間ですので、指導できる人数には限界があるため、入会希望の方には、このあたり、メールのやりとり、あるいは面接で、しっかりその意欲を確認させていただいています。これは現在の登山レベルや技術レベルの問題ではなく、人間としてなにを大切にしているのか、という点に集約されていくと思います。また、有料のガイド山行ではなく山岳会での活動である以上は、参加者にはパーティーメンバーとしての役割を果たしてもらわなければなりません。単に「気に入った計画だけつまみ食いしたい」「停滞したり転進したり、興味のない活動や単なる訓練になるくらいなら途中で帰りたい」「自分は他人の車に乗せてもらうけど、自分の車に他人を乗せるのはイヤ」などという自分本位の考え方をする方にはそもそも計画に参加していただけなくなります。山岳会では「同じ力量のもの同士がパーティーを組む」のが基本であり、そのためには自分のパートナーを自分で育てる、共に成長する、という意識がないと、まずロープを組むパートナーを探すことは不可能です。1年程度であちこち山岳会を渡り歩いてもパートナーに巡り合える確率は低いものと考えてください。それよりもパートナーを得るための確実な方法は、まず自らがリーダーとなるだけの技術と経験を積み、自分とロープを組めるようにパートナーを育てる、という道筋になります。特に若い世代には、この方法をお勧めします。ただし、「リードもできない」「地図・コンパスも使えない」「道具も満足に持っていない」「ルーファイもできない」「経験もない」「山での常識以前に社会常識もない」「山行での食事も満足に組み立てられない」「教えられても技術を覚えられない」という半人前以下の人をパートナーにしようという場合、よほどしっかり技術指導ができないかぎり、同行させたり「使える山屋」になるまで教えたりするのは至難の業となります。時には指導不可能という事態も起こります。技術は運転免許ではないので、1年程度では身につきません。中途半端な修得のままルートに出かけると、自分自身も仲間も危険に晒すことになりかねません。残念ながら、技術の習熟不足の事故も頻発しています。医師や航空機のパイロットに適性があるように、アルパイン・クライミングにも適性があることは否定できません。万が一、自分に適性がないと判断されてもそれを受け入れる覚悟が必要となります。そのような場合にはやはりガイド山行を利用する方が安全です。
また、アルパインクライミングの世界も基本は人間関係が重要となります。ひとつの山岳会に数ヶ月程度しか在籍せず(できず)、幾つもの会を渡り歩いても相手にされない、というのなら、相手を責める前に自分が社会性を身につける必要があるのではないかと立ち止まって考える必要もあります。一緒にいて不愉快な人や気の合わない人と進んで仲間として山に行こうとはならないものですから。あくまで会員は余暇活動として登山をしているのであって、職業として新人の面倒を見ているわけではありません。
このような現実を理解されず、単に「ジムで知り合った頼もしい男性のいる会が楽しそうだから、その会の計画に参加したいけれど、その会は初心者に教えてくれないから」「講習会やガイドは高いし」という理由で、無料だから当会の基礎技術教育を受けて楽しい大人数での山行は別の会で黙っていけばいい、と考えても、本心は遅かれ早かれわかってしまいますし、アルパインの世界は狭いので、所属先にかかわらず、情報は筒抜けです。楽しい大人数の会で楽しいのなら、無理に背伸びをせず、楽しいことだけに専念した方がいいですし、ガイドで満足できるなら下手に自立しようと考えない方が金銭的には節約になりますし、安全も確保できます。
当会で、他会ではありえないほど新人や初心者を丁寧にバックアップするのは、ひとりでも多くの若い世代に身の安全を守るための技術を身につけ、この素晴らしいアルパインクライミングの世界を自律的に楽しんでほしいと考えているからです。ガイドに多額を費やさなくても、一生楽しめる技術を身につけたクライマーが増えてくれれば、世界はもっと明るくなります。しかし、明るくするための能動的な働きかけを自ら続けていかない限り、その光はやがて失われてしまうものなのです。資源も消費するだけではやがて枯渇します。経済的成長だけを考え、目先の利便性を追い求めた結果、私たちは世界的な環境の悪化に直面し、その影響を身近に感じるようになってきました。それは人間の活動でも同じで、登山のような複雑な文化的活動では意識的に継承を模索していかない限り、自らの行動を次の段階へと繋げる可能性が閉ざされてしまいます。
あなたがステップアップしたくてもどうしたらいいのかわからなかったように、きっと同じように悩んだり、登りたいなあという気持ちに急かされるような状態にある人が次から次へと現れて、当会の新人募集に応募してきます。そんなとき、安全に手助けができるような、可能であれば指導ができるクライマーに成長していただきたい。自分が登れればいい、自分さえ良ければいい、今が良ければそれでいい、と考えていては危険なばかりでなく、資源が枯渇するかのようにやがては行き詰まるという点を理解し、日々の活動を組み立てて欲しい。これが当会の新入会員募集時の願いです。