当会の方針

 MLTを説明する前に当会の基本方針について触れておきたい。

 前回の記事で、なぜ山岳用語に軍隊用語が多いのか、おわかりになったことと思う。

 パーティーを組むと必然的にリーダーの権限が大きくなるため、軍隊チックになりやすいというのもあるが、おおもとが軍事テクニックだった近代登山発祥まで遡れば、さらにその理由がわかろうというものである。

 つまり、登山にはトップダウン式の軍隊スタイルが否応なくセットされてしまい、それは日本において高度成長期の未踏峰初登頂ブームや初登ルート開拓ブーム、ヒマラヤ遠征ブームなどと相まって社会人山岳会にも蔓延していくこととなる。組織力を高め、登頂率を上げる最善策は軍隊方式であった。必然的に山岳会の会員は飼い慣らされて唯々諾々とリーダーの指示に従うようになる。社畜の皆さんはこの役割にうってつけである。極地法には資金と会員の数も必要だった。チリも積もれば山となった。

 だから、「言われたとおりにしかできない」「言われたとおりにしかしない」会員は重宝がられたから、その流れは増長され、依存心が育まれていった。

 21世紀の今、当会ではこのスタイルを取らない。

 ではどんなスタイルなのか。

 一言で言ってしまえば、対等な人間関係を基本とする登山スタイルである。

 誤解しないでいただきたいのだが、これは「だれでも入会OK」という意味ではないし、「入会したら好きなようにしていい」「礼儀は無視していい」という意味でもない。

 また、「対等」と「平等」は異なる。ハイキングは平等に行える活動だが、アルパインクライミングは誰もが平等に行える活動ではない。これは手をあげれば誰でもパイロットになれるものではないのと同じことだ。

 これは大事なポイントである。

 残念な真実であるが、アルパインクライミングには適性がある。

 「なんでもみんな平等」と信じているのは一種の病である。

 近代社会で「平等」というワードが流行ったのは、あくまで公民権周辺の事象について、である。これを誤解している人々はとても多い。

 だが、「平等」でなくても「対等」にはなれる。

 当会はこちらの方向で考えている。

 つまり、リーダーとメンバーが山行中の疑義を極力解決し、納得できる経験を積み上げる土台を相互に構築し、個々の判断とパーティーの判断の齟齬を最大限減らす努力をする。そのためにトレーニングを行う。決して「山行中、パーティーを分ける」「体力のあるものが先行してかまわない」という意味ではない。

 これが当会の考える「対等」の内実となる。

 そのためには、まず、初心者であろうと「対等であろうとする意志」「対等になるために自ら成長しようとする姿勢」がなければならない。

 流石にゼロ意識の人たちに意識を植えつけることはできかねる。

 実は面接で測定しているのは、この「姿勢」と「意識」である。

 さらに「対等」とは「マナーを無視する」という意味ではないので、SNSとメールの使い分けができないようなまっとうな社会人としては認められない方々も認識に齟齬がある。タメ口をきくことが対等だと誤解しているおバカな若者がそのまま社会にでているが、当会はこの風潮を容認していない。ひと言添えるなら、メールをいただいた時点である程度の予想がつく。

 しつこいようだが、「ガイドの代替」として当会を考えているのであれば、「対等」にはなり得ないから基本的にNGになる。

 パーティーを組むのであれば、最終判断はリーダーが決めることにはなるが、メンバーはその判断の根拠に納得し同意してもらう。もしパーティーメンバーに力の格差があるのであれば、相互に補完する関係を構築する。

 ここでも誤解しないでいただきたいのだが、これは「どの計画にも無条件で参加できる」という意味ではない。

 登攀力、体力、地図読み力、危機管理能力などを総合してパーティーメンバーは構成される。

 そして当会では教育を掲げる以上、メンバーに必要な技術を教えると同時に課題も課す。その課題をクリアできなければ危険が増すので、トレーニングが必要になる。

 そしてもうひとつ、当会の方針は「去るものは追わず」である。

 これは「いつのまにかいなくなる」のとは異なる。

 実際アルパインクライミングをしてみて、これは私の趣味趣向に合わない、と感じる方も出てくると思う。

 考えていたよりずっと危険、こんなことしていたら死んじゃう、など、いろいろ考えることもあるだろう。

 そんなときにはどうぞ遠慮しないでいただきたい。

 新興宗教ではないので、何がなんでも引き止めようとはしない。

 好きでもないことをする必要はどこにもない。

 もちろん、当会でハイキング部門を充実させるという方向もあるから、方向転換するなら腹を割って話していただきたい。

 

 さて、ここでようやく本当にMLTに戻ろう。 

一緒におたまじゃくし観察--尾瀬にて
一緒におたまじゃくし観察--尾瀬にて