現象を生きる

 この間、登山界をめぐる現象とそのおおもとにある背景をかなーり大ざっばに考察してきた(つもり)。

 なぜこんなことを書いてきたかと言えば、元々は「山岳会をガイドがわりにしようとする依存心の強い入会希望者」が予想以上に多かったという事実から出発している。

 でも、今までの経緯から言えば、こうした人々も歴史的存在なので、大量発生するのにはそれなりの理由があるはずだ。

 そして、当会では「自立した登山者」を育てたいわけなので、依存する人々が大量発生する理由を考えないことには「自立」への道が模索しきれない。

 私たちは現象を生きている。

 登山リーダー、特にアルパインリーダーが山岳会から消えたという現象。

 依存心が強く自立しようとしない登山者の大量発生という現象。

 ツアー登山や旅行会社の募集登山の隆盛という現象。

 そのはざまに、道を模索して探しあぐねている人々も存在する。

 このすべてには相関関係があり、登山界としては憂慮すべき事態となりつつある。

 この上、MLTが正確に理解されないまま、UIAAスタンダードが日本に導入されるとどのようなことになるか。

 ここまで読んでいただければお分かりのとおり、スタンダードを金銭関係にすりかえる、という事態になる。

 つまり、スタンダードで金儲け、と直結する。これを阻止する手立ては考えられていない。

 そうなると今の状況はさらにカオスと化す。

 これは火を見るより明らかだ。

 現在、私たちはその前夜を生きているので、ここは金儲けには興味のない「まともなアルパインリーダー」をできるだけ育てておかねばならない。

 これこそが社会人山岳会の使命と言ってもいい。

 だが、MLTの対象者が熟練クライマーであるのと同じで、アルパインリーダーになるためには、まず、その前段階の登山、つまりハイキングをたくさんしてもらわなければならない。

 当会の新人教育ではこのあたりも視野に入れている。

 だが、試行錯誤もついてまわる。この点はご容赦いただきたい。

 手始めに、当会では若者にはできるだけ楽しい経験をしてもらい、シニア層には人生経験を生かしていただき、相互の良さを生かした関係を年代を超えて構築していただきたい。それは通常のトレーニング山行でも可能なことだと考えている。そしてそのための努力も要請される。

 初心者で新規入会の方々には、ぜひ、このような方針を理解していただき、お客様扱いはされないことを今一度ご確認いただきたい。

阿蘇にて・ハイキングも楽しい!
阿蘇にて・ハイキングも楽しい!