谷川岳一ノ倉沢衝立岩中央稜

 

今回は還暦祝いにオールリードしていいとのこと。初見である。わーい。

 今回の目的は新人にクラシックルートを体験してもらうことだったが、とりあえず達成できた。

 日付が変わらないうちにベースプラザ入りできたので、3時少し過ぎに起きて用意してきたおにぎりを食べ、4時前にはパーキングを後にした。5時、一ノ倉沢出合いにはテントが2張り、先行するパーティーが何組か見えた。ここで装備装着、中央稜取り付きに向かう。雪渓はtakaによると思ったより雪が多いものの、過去に比較してやはり残雪量は少ない、とのこと。スプーンカットがあまり発達しておらず、丁寧に歩く。テールリッジはhomiの足取りがしっかりしているので、ロープを出すことなく順調に通過。6時についたものの先行Pがいるので彼らの準備を待ち、さらにフォローの登攀まで30分待つ。聞けば先行Pは4Pで降りるとのことなので、すぐ後ろについて登攀開始。最初のピッチは快適な足慣らし。ビレイ点は独占使用され、ギアで支点構築し後続にあがってもらう。2P目も先行Pのすぐ後ろから続き、ビレイ点はやはりギアで作る。3ピッチ目は出だしのトラバースが少し微妙な感じだが、ここも快適。4ピッチ目にはしっかりしたテラス状の足場があり、いよいよ核心。35メートルほどロープを伸ばし、最後の2メートルほどがチムニーとなる。乾いていれば快適そうなクラックがびっしょり濡れて触ってみた感じヌメってすべりそうなので、クラック使用は諦め、足を張ったままフェース気味に上を取りに行く。ハーケンが一枚打たれていて、本来ならクイックドローをかけるのだが、なんとその前までに使い果たしてしまっており、残りのカラビナ2枚でランナーをとる羽目になった。簡単な場所でクイックドローをホイホイ使ってはいけない! 

 さて、先行Pがいない5ピッチめ。出だしは3級のフェイスで、暗いルンゼ状を右上して行くとピナクルのあるゲート状のビレイ点。ピナクルからスリングを巻いてビレイ。6ピッチ目は出だしにカムを決めて右上し、リッジに出る。ここからは快適な壁となり高度感も相俟って楽しいクライミング。7、8ピッチめはフォローの二人が歩いて40メートルずつほど伸ばし、その後最後のルンゼを20メートルほど登りきり、衝立の頭にたつ。

 ここから烏帽子尾根経由国境稜線までがアルパインクライミングのアルパインクライミングたる所以ともいえるのだが、4ピッチ目より上に登るパーティーは少ない上に、さらに稜線まで詰めるパーティーはなんと私たちのみ。コロナのためにみんなが慎重になっているのか、もう稜線まで詰めるパーティーはいないのか

 衝立の頭から尾根上をそのまま北上し、途中でルートが不明瞭になる。懸垂岩の乗越手前でルートを見失い、考えたあげく岩壁の右側を巻くことにして岩とブッシュの間を5級の木登り・ブッシュ登りとなってしまう。踏み跡はもう少し下方の笹藪の中だったらしい。この後、takaは右寄りに残置ハーケンを見つけ、右上から方向を左上に変えて、草付きとルーズな浮石だらけの急斜面をノーランナーで詰め切って懸垂点に辿りつく。懸垂点から8メートルほど下降し、ブッシュをトラバースし、南稜からの尾根に乗る。ここから藪漕ぎと尾根歩きのミックス地帯を抜け、1時間近くひたすら笹藪を漕いで国境稜線に出る。一ノ倉岳からオキ、トマ、とピークを連続ゲットし、宿泊予定の永楽荘にチェックインが遅れる旨の電話連絡をして、西黒尾根へ。

 長い西黒尾根はいつも冬にしか登らないし下降もしないので、久しぶりの夏道はとても新鮮だった。最後の最後、日が落ちて足元が見えなくなり最後の10分のためにヘッデンを出した。

 無事ベースプラザに帰着し、永楽荘に向かう。お風呂に30分ゆっくり入り、豪華な夕食とビールを堪能した。

 翌日はゆっくり起きて8時朝食、あちこちhomiに案内しながらマチガ沢のマムシ岩でロープワーク。通り雨に降られて早めに下山し、ワラビをとったり土合駅の階段を数えたりしてから、軽い食事をして帰宅。

今回、どのルートも大入り満員だったので、稜線に抜けるパーティーが全くいないとは考えていなかった。マルチ扱いにしてクライミングルートは登っても本来のアルパインクライミングを行う山岳会がなくなってきていることを実感した。そのせいもあるのか、Kガイドの最新ガイドブックにもある通り、上部が荒れてルートがわかりづらくなっている。クライミングルートを同下降するパーティーばかりだと、クラシックは廃れる一方だろう。個人的にはガイド山行の影響かと思う。ガイドは上まで登るのが(お客さんにとっては)大変なので稜線まで抜けないし、ルート整備もしないので、4ピッチ目まで登れば中央稜を登ったのだと誤解する人たちが増えたのではなかろうか。もちろん天候が悪化した、アクシデントがあった、諸事情で時間がかかりすぎた、などのためにエスケープとして途中で降りるという判断はあってもいい。しかし、最初から4ピッチ目までしか登らない計画なら、小川山のほうがむしろ面白いし練習になるのではないか、ここは本チャンルートだからマルチの練習のためなら他にもっといいルートがあるのではないか・・・などとついつい考えてしまう。もっとも私が中央稜を登らずにこれまで残してしまったのは、上まで抜けることを考えずに練習のために継続(槍穂のようにピークは踏まないが)でラインを変えて登るのではなく、一本完結スタイルでやってきたせいかもしれない。終了点から上部は一回行けば同じだから、2回も3回も登る必要はない、という考えでラインを変えて岩登りパートのみに絞るのかもしれない。吉尾弘の直弟子だった相方は「途中で降りてピークを踏まないなら、それは敗退っていうんだよ」と言われてやってきているので、釈然としない考え方らしい・・・「4ピッチ目同下降は混雑していたら危ないし、北稜下降もそれなりに危ないし、それくらいだったら上まで抜けた方が安全」とのこと。確かに下降トラブルも多い(らしい)。

「試練と憧れ」は劔のスローガンだが、当会会員には鍛錬して登りきってピークを踏むというスタイルを大事にしてほしいと思った。おそらく今後海外のアルパインを目指すなら、今回のようなスタイルが必須になるから・・・

 谷川は今、花が満開。

 石楠花、イワカガミ、イワウチワ、シラネアオイ、ショウジョウバカマ、イワナシ、西黒尾根にはカタクリも。

 永楽荘の夕食。

 このほかにイワナの塩焼きが追加された・・・

 疲れて降りてきて、こんな食事と気持ちのいい温泉があったら、いい歳した大人としてはホントに幸せ!

 テントに泊まるか宿に泊まるか選択できる立地環境にあるなら、それぞれの懐具合と体力に応じてベストな選択を。