It’s a small world

歓送迎会の季節になると思いだすことがある。

もっと若い頃、まだ20代だった頃、転職のための面接を受けた。面接官が他に採用したい人がいたらしく、かなり敵視した、結構ひどい質問をされた。面接だからそつなく応答したが、採用はされなかった。それから何年も経ち、今度は私が採用の面接官になった。すると、なんと、私が以前転職希望した先から応募があり、敵視した質問をしたあの面接官が目の前に出てきた。採用を希望する応募者として。

つまり、ここでは立場が逆転したのである。私は師匠筋から、立場の逆転はよくあることだから、面接官になったら気をつけなければいけませんよ、と忠告されていた。若い頃は、一方的に判断を受ける側でしかなかったが、いつしか立場が逆転するケースが増えるようになった。その後、何度も立場の逆転を経験することになった。

さらに私の師匠筋は、公私を問わず組織を去る際には礼儀を欠いてはいけませんよ、とも忠告してくれた。だから、私は転職ばかりでなく、どの組織や団体を去る際にも礼儀を尽くした。そのため、快く送り出してもらえた。仕事の場だけでなく、以前所属していた山岳会を辞める際にも礼儀を尽くしたので、その会のメンバーとは今でも一緒に海外に登りに行く。

しかし、気の毒なことに、世の中には私の師匠筋がしてくれたような忠告を受けたことのない人たちも存在する。そういう人たちは組織を去る際にも山岳会を辞めるときにも後足で砂をかけるようにして去っていく。

師匠が言いたかったことは、プライベートでの活動にはその人の本質が反映される、ということだった。仕事の場でどんなに取り繕っていても、プライベートでの本質を隠し通すことは不可能だ。プライベートでどんな言動をしてもかまわないと考えている人もいるようだが、それがその人の本質である。社会に出る前に、「頭隠して尻隠さず」とは、そういう意味なのですよ、と言われた時には実感が湧かなかったが、時間と経験を通して、なるほど、と納得するようになった。

かわいそうなことだが、砂をかけて去っていく人たちは、この世界には人智を超えたつながりがあるという不思議や、自分の本質が隠せないという事実に気づいていないのだ。気づくように促してくれる豊かな人間関係にも恵まれなかったのである。ゆとり世代になって、ますます、そういう豊かさとは無縁になったようだ。もっとも、私と同年代でも上の年代でも考えの至らない人は存在するのだが。

世代といえば、登山やスキー愛好家には、私たちの同年代が大勢いる。その中にはかなりの確率でいろいろな組織のトップになっている人も混じっている。あるいは特殊な技能を有する人も多い。仕事ではない、趣味の世界での繋がりはびっくりするくらい人間関係を広げてくれる。こういう人たちは人間の本質を見極める眼を持っているな、思わされることが多い。そして、皆、この世界は意外と狭い、想像しているよりもはるかに狭い、ということもよく知っている。彼、彼女らはきちんと忠告してくれる豊かな人間関係に恵まれたのだろうと推測できる。

見えない繋がりは至るところに存在している。私はかつて師匠筋がしてくれた忠告を、大事な後輩には伝えておこうと思う。

It’s a small world.