飯豊山

 飯豊山荘から温身平まで歩いたところでようやく稜線が見えた。予報通り降雪があったようだが、雪がついているのは稜線のわずかな部分のみで、標高2000メートルくらいからだろう。多少雪はあるが、気温はさほど低くならないはずなので危険はないと考え、むしろ、雪景色を期待しながら進んだ。

 5時間半ほどで山頂に達した。1900メートル付近からは一面雪景色となり、吹き溜まりで30センチ以上の積雪だった。

 ピークを踏んだ後は、ひとまず宿泊予定地の本山小屋に向かい、翌日以降の行程を検討。山頂付近と同じようなぐずぐずの雪の中を2日目も歩き通すとなると辛い。かと言って雨予報の中ダイグラ尾根を降りるのは気が引ける。悩んだ末、稜線を進み一つ先の御西岳避難小屋に行き、翌朝の状況を見てダイグラ尾根を引き返すか、稜線を先に進むかを判断することにした。飯豊山から御西小屋までは雪が中途半端に溶けてシャーベットの中を歩いているようで、相方も相当滅入っていた。避難小屋までせっかくテントを担いだが、ぐずぐずの地面に設営する気力もなかったので、小屋泊を選択した。

 夕方、一時的に晴れ間が広がり下界や周囲の稜線の状況が見えるボーナスタイムがあった。夜はひたすら補給と睡眠を繰り返して体力も万全に回復。そして雪解け水の中を歩いても平気なように、持っていたビニール袋で簡易靴下を作った。

 翌朝、小屋の管理人達は天気が崩れるから出発するなら早めの方がいいと言い残して薄暗いうちに出て行った。我々は充分に明るくなってから出発することにし、雨の中のダイグラ尾根下降を避けて行程通りのルートを進むことにした。標高が下がり南向きの斜面になるうえ、一晩の雨で雪も多少は解けたはずなので雪の影響を受けずに踏破できる。稜線上に二度あるピークのうち一つ目の烏帽子岳を過ぎるまでは雪が残っていたが、それ以降は別の山域のように雪がなくなり安全なルートをたどることができた。

 活力を取り戻した相方は初日とは打って変わって驚異的な速さで歩くので、飯豊山荘にはコースタイムの半分以下の4時間弱で到着してしまい、そんなに早く歩かなくてもいいのにと思った。